【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3
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2 ◆ELFzN7l8oo [sage]

AAS

NG

新規参入者はここで参加の意志を伝え、投下順の指示を受けてからプロフ(以下参照)とロールを投下して下さい。
基本的にレス順を守ること。
○日ルール(※)は3日とします。
※レス順が回ってから連絡なく○日経過した場合、次のレス番に投下権利が移行すること。
(その場合一時的にNPC(他PLが動かすキャラクター)扱いとなる事もあります)
挨拶、連絡、相談事は【 】でくくること。


名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
特技:
長所:
短所:
武器:
防具:
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:


スレタイの通り、要塞を敵から守るという主旨のもと、ストーリーを展開していきます。
名無しの方の介入もありです。
第1部は完結済、第2部は進行中。以下、1部のあらすじを投下、2部を再現します。

2016/04/08(金)04:40:23.05(Qk6jaXPx.net)


3 ◆ELFzN7l8oo [sage]

AAS

NG

【第1部あらすじ】

王国の辺境……深い森の中にひっそりと屹立するベスマ要塞。
かつて帝国との大戦において重要拠点であったこの要塞はいつしか廃棄され、今やならず者達の住処と化していた。
ベスマ要塞にはいくつかの噂があった。
秘宝が眠る、亡霊が彷徨う、秘密の地下研究錬に……黒い頭陀袋を被った正体不明の怪人が棲んでいる……
噂の一部は真実だった。怪人とは死者を操る屍術師であり、亡霊とは彼が作り出したアンデッドだったのだ。
ある嵐の夜、弓使いの少女が要塞に逃げ込んだ。
ここはならず者の巣窟、と彼女の身を案じた死術師は傀儡のスケルトンを介し明日には要塞を出るよう説得する。
そんな彼に好意を持った少女はすぐにでも会いたいと言い出す。彼女は名をイルマといった。
怪人は自らを賢者――ワイズマンと名乗った。
彼はイルマに一夜の安息を約束するが、ワーデルロー・ドゥガーチ率いる帝国の軍勢はすでに迫っていた。
ワイズマンは中庭で人形の制作に没頭していた人形使い(=クレイトン)とイルマとの3人で帝国軍に立ち向かう事を決意。
運悪く立ち寄った行商のエルフ(=シャドウ)を匿いつつ、戦いの火蓋は切って落とされた。
イルマの射的の腕は確かだった。火矢を用いた作戦も功を奏し、多くの重騎兵達を殺傷し敵に打撃を与える。
クレイトンの鉄人形もその巨体と腕力で敵兵を捌くが……多勢に無勢。人形は壊され、イルマは敵矢を受け倒れてしまう。
そんなイルマをシャドウが一蹴した。彼は帝国の密偵だったのだ。
彼は何故かイルマを治癒の魔法で回復させ、秘宝を求め地下研究棟へと向かっていった。
劣勢に傾いたと思われた要塞側だったが、ワイズマンの大魔術が形勢を一気に逆転させる。
巨大な魔法陣を天に具現、死者をゾンビと化して従え、さらに死体の集合体=レギオンを作り出し、敵を蹂躙したのだ。
指揮官のワーデルローは悪魔との契約によって魔に変化するも、イルマの矢に倒れ消滅、要塞側が勝利したかに思われた。
しかしシャドウは地下通路へ続く扉の封を解き、地下研究棟へ続く回廊にまで到達していた。
イルマはワイズマンを助けようと彼を追うが、疲れ果てた上に死霊にとりつかれ気を失ってしまう。
シャドウはイルマから死霊を取り払い、その上でワイズマンを研究棟から出てくるよう挑発。
それに応じたワイズマンはその正体を現した。その身を死そのものと化した強力無比のアンデッドだったのだ。
要塞に眠る秘宝も、最高の叡智と秘術を身に付けたワイズマン自身であった。
ワイズマンの容赦ない攻撃呪文に対し、シャドウも古代エルフの魔法を用いて応戦する。
両者の戦いは熾烈を極め、それを目の当たりにしたイルマは自分のせいだと自身を責める。
ついにイルマはワイズマンの最後の攻撃魔法(帝国軍をも一瞬で滅ぼす威力をもつ)の只中に身を投じ、その威力を相殺。
息絶えたイルマの気丈さに心を打たれたシャドウは自らの命を引き換えに蘇生の呪文を唱え、倒れるが……。
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2016/04/08(金)04:41:44.51(Qk6jaXPx.net)


4シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/18(金)投下分sage]

AAS

NG

名前: シャドウ・ヴェルハーレン
年齢: 310(外見は18歳前後)
性別: 男
身長: 185
体重: 85
種族:エルフ
職業:帝国皇帝直属の騎士だったが、現在は要塞を警護する門番
性格:計算高く疑り深い、敵には容赦しない
長所:話せば解る奴、かも知れない
短所:火炎系魔法は苦手
特技:上級魔法が使える
武器:短剣、鞭
防具:なし
所持品:魔法関連の薬草
容姿の特徴・風貌:金色の長髪を後ろで束ねる。額には五芒星の印。
簡単なキャラ解説:「この世の叡智=賢者」守るため、要塞上部で番人をしている。

2016/04/08(金)04:56:26.20(Qk6jaXPx.net)


5シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/20(日) 投下分sage]

AAS

NG

肌を刺す氷のような感触に「彼」は思わず顔をしかめた。しかし手元が狂わぬよう‥ゆっくりと刃を頬に滑らせる。
『行商が来たら純銀製の剃刀を手に入れよう』
いつも思うのだが「ここ」には滅多に客は来ない。
この要塞にまつわる「噂」がそうさせているのだろうが、今の彼にとってはあまり重要な事では無かった。
要塞の最上階、「医務室」と呼ばれる場で生活する彼にとっては。

あの要塞の一夜からどれほどの時が経ったのだろう。
気がついたら「地下研究棟への扉」の前に倒れていた。
少女に蘇生術を施したその後に何が起こったのか‥知るは賢者のみだが‥彼は何も語らない。
兎にも角にも彼はここに存在し、それが意味するのは‥術が失敗したという事だ。「彼女」はもうこの世に居ない。
帝国が崩壊したという情報がもたらされたのはそのすぐ後のこと。
帰る場もないが追手の心配もない。それならいっそ居座ってしまおうか、そんな軽い気持ちでここに居る。

【亜人、客だ】

いきなり声をかけられ剃刀を落とした。頬にうっすらと赤い筋が走る。
人が入って来たのではない。魔法による伝令だ。
一体いつになったら名で呼んでくれるのだろうとため息をつく。ま‥‥ネズミか蠅、よりはマシか‥?

外套を羽織り中庭に出た。春の陽気が鼻をくすぐる。
外壁の向こう側に人が居る気配。むせかえる花の香りが邪魔をして‥人間なのかどうかすら解らない。
いっそ門を叩いてくれればいい、その方が対応しやすい。

2016/04/08(金)04:57:49.65(Qk6jaXPx.net)


6創る名無しに見る名無し [2016/03/22(火) 投下分sage]

AAS

NG

エルフの旦那、銀のナイフは要らんかね?

2016/04/08(金)04:59:19.96(Qk6jaXPx.net)


7マキアーチャ ◇hsZ84b.sAE [2016/03/22(火) 投下分sage]

AAS

NG

名前:マキアーチャ
年齢:20
性別:女
身長:165
体重:50
種族:人間
職業:ハンター
性格:淡々としている、ツンデレ
長所:射撃の腕がまあまあ
短所:あまり頭で考える方ではない
特技:二本射ち
武器:ロングボウ、クロスボウ
防具:皮の胸当て
所持品:矢等
容姿の特徴・風貌:髪を三つ編みにした、細身のアーチャー
簡単なキャラ解説:平凡な冒険者生活に嫌気がさしている、女ハンター。
ここに来た目的:何も考えずに歩いていたらたまたま要塞にたどり着き、遺跡・廃墟マニアなので興味を持った。


私はマキアーチャだ。そこの男、お邪魔するぞ。
ところでここは何だ? あなたはここに住んでいるのか?

2016/04/08(金)05:01:27.36(Qk6jaXPx.net)


8シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/23(水) 投下分sage]

AAS

NG

>6
姿の見えぬ客。その第一声に、門を押し開けようとした腕の動きが止まる。
こちらをエルフの男と言い当てたその力強い声音はドワーフのものだった。
ドワーフの5感は鋭敏だ。花の匂いに微かに混じるエルフの匂いを嗅ぎあてるとは流石‥と言おうか。
「エルフの旦那」は首を軽く振ると、門を開けた。ドワーフは信じられる。
少なくとも人間よりは。
はたしてそこには、およそ想像した通りの男が立っていた。
背丈はエルフの半分ほど、鍛冶職人を思わせる革服を身に付けたその男は、人の良さそうな赤ら顔をこちらに向けた。
手早く敷物を敷き、自慢の商品を並べ始める。

思わず唸った。
ドワーフの手による品の何と美しいことか。装飾もそうだが、その重厚さ、心に響くものがある。
鉄の品は無かった。おそらく相手がエルフと知り、あえてその場に出さないのだろう。
日用品は無いのかと尋ねると、お安いご用と云った風に荷を解き始める。
銀の皿にフォーク、スプーン、燭台に柄の長い剃刀。
ひと揃い選び、懐の薬草を手渡した。
明らかに不審の色を浮かべたドワーフに、
これはエルフの聖地にしか生えぬ貴重なもので、魔力と生命力を引き出す薬草だと説明すると、とたんに顔をほころばせた。

取引成立。
これでもう‥食事と身支度の度に嫌な思いをせずに済む。

2016/04/08(金)05:03:34.80(Qk6jaXPx.net)


9シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/23(水) 投下分sage]

AAS

NG

>7
ふと見上げると、人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
ドワーフと入れ替わるように門の前で足を止め、じっとこちらを見つめるそれは‥人間の女だった。
イルマより歳は少し上だろうか‥などとつい思い、首を振る。
あらためて彼女を観察した。
彼の背丈とさほど変わらぬ長さの縦弓の他、横弓を装備している。
小娘の持つ弓よりいくらか上等な得物だ、と感心し‥‥ハッと我に返る。意図せず彼女と比べている自分に舌打ちする。
女はニコリともせず、マキアーチャと名乗った。警戒を少し緩める。名乗られたのなら名乗り返すのが礼儀だ。

「私はシャドウ(影)と呼ばれている」

君は・と言いかけるが矢継ぎ早に質問を浴びた。ここは何か、ここに住んで居るのかと。
彼女は彼は日用品を買うところを見ていたはずだ。つまり「何故住んでいるのか」と聞きたいのだろう、と勝手に解釈する。
ふう‥‥‥っと長いため息が出た。しばし思案し口を開く。

「ここは王国の領地内。つまりここは王国の要塞」
一陣の風が吹き、咲き誇る花の花弁を吹き散らした。額に降りかかる花を手の甲で振り払う。

「この額の印は帝国騎士の証。帝国の者が王国の要塞に居る。‥故にその疑問はもっともだが‥話せば長くなる」
外套が煽られ、彼の服装が露わになる。騎士とは言うが、鎧の類を一切つけず、長剣も帯かず。

「見ての通り、私はエルフ。故に魔法が使えるが‥案ずるな。行使時はこの印が光る」
今は光を帯びていない印に軽く触れる。

「こちらの問いにも答えてもらおう。ベスマ要塞。この名を聞いたことがあるか。その名にまつわる噂も」

獅子に似た金色の眼を細め、じっとマキアーチャを見つめた。
敵なのか否か、彼女の貌(かお)から読み取る事が出来ないでいる。

2016/04/08(金)05:05:52.20(Qk6jaXPx.net)


10マキアーチャ ◇hsZ84b.sAE [2016/03/23(水) 投下分sage]

AAS

NG

エルフの男に挨拶すると、シャドウ、と名乗られた。
ここは王国の領地内で要塞だという答えに、マキアーチャはほっとした。

「なるほど、そういうことか…
ベスマ要塞だと…?ここが!噂では地下に宝がある、ということぐらいだ。
どうせ王国が棄てたほどの要塞だ。もうとうの昔にそんなもの、無いんだろう」

シャドウに見つめられる。どうやら敵意はなさそうだ。
マキアーチャは、弓を下ろすと、その近くに腰掛けた。
「少しの間だ。弓の練習場にでもさせてもらおう。
大丈夫、気が済んだら帰るから。食料も心許ないんでね。
それにしても、この近くは甲冑やら武器やらの破片を多く見る。
この近くで少し前に戦争でもあったのか?」

2016/04/08(金)05:06:59.37(Qk6jaXPx.net)


11シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/24(木) 投下分sage]

AAS

NG

驚いた。
ベスマ要塞の宝の噂を耳にしていながら、どうせ無いのだろうと一笑に付したのだ。
冒険者はたいがい宝という言葉に弱いものだが‥‥この女、ぶっきら棒だが邪気がない。
シャドウの視線から目を逸らし、外壁に立てかけた弓の傍らに腰かけたマキアーチャを眼で追う。
印象としては悪くない。さばさばとしていて言葉の澱みもない。
が‥かといって簡単に信用は出来ない。

>「少しの間だ。弓の練習場にでもさせてもらおう。
大丈夫、気が済んだら帰るから。食料も心許ないんでね。
それにしても、この近くは甲冑やら武器やらの破片を多く見る。
この近くで少し前に戦争でもあったのか?」

ああ、と答えて要塞の周辺を見渡した。多少草木に紛れているが、かつての戦いの跡は手つかずのままだった。
無論片づける気はさらさら無い。
骨が折れるという事以前に、鉄に触れたくなかった。焼けたそれを触った時と同じ衝撃を受けるからだ。
エルフ特有の‥一種のアレルギーなのだろう。実際に火傷を負う訳ではないが。

「かつての帝国がここに攻め入った。その数は‥これを見れば想像に難くないだろう」
半分土に埋もれた鉄製の剣を足で小突いた。錆びた破片が風で巻き上がる。

「それが‥‥一夜にして全滅した。ただの3名の手によってだ。信じられるか?」
瞼を閉じる。その時の様相がまざまざと浮かび‥たまらず目を開く。
何事も無かったように歩き出した。彼女の「得物」の方へ。

「素晴らしい長弓だ。確かにここは‥練習には持ってこいだな」
長弓の例に漏れず、その長さは彼女の背丈を超えている。材質は‥骨‥或いは象牙だろうか。
主に馬上で弓を引いていた彼は、この長さの弓を扱ったことが無かった。触れてみたい。何かを射ってみたい。

要塞を取り囲む森に目を向けた。陽は高いが、鬱蒼と茂る森の中は薄暗い。
鹿がいる、と直感的に感じ取る。
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2016/04/08(金)05:08:07.53(Qk6jaXPx.net)


12マキアーチャ ◇hsZ84b.sAE [2016/03/24(木) 投下分sage]

AAS

NG

「かつての帝国がここに攻め入った。その数は‥これを見れば想像に難くないだろう」
半分土に埋もれた鉄製の剣を足で小突いた。錆びた破片が風で巻き上がる。
「それが‥‥一夜にして全滅した。ただの3名の手によってだ。信じられるか?」

シャドウからの説明が入る。
「なるほど。あちこちにあった白い粉のようなもの、その塊、人の骨ということか。
これは…相当の人数だな。三人で、などは不可能だろう。私は何度も戦場で撤退を経験している」

話している間にもシャドウが長弓について誉め、さらに勝手に手に取って外にいる鹿を狙い撃った。
こちらにはクロスボウがある。もしこちらを狙うなら先に撃つことなどは容易い。

外の鹿に矢を放って落胆するシャドウを見て、マキアーチャは僅かに笑った。
「あなたは見たところ弓使いではないようだな。エルフの割に、他の文化に精通し過ぎている」

「長弓の軌道は慣れていなければそれを読むのは難しい。ましてや動く動物ならな」
そう言うとマキアーチャはクロスボウを構え、クォレルを鹿に向けては発射した。
外れた、かに見えたが鹿の尻尾付近に一本が刺さっている。鹿は動きを封じられ、
他の仲間は少し離れた位置で遠巻きにしてそれを心配するように眺めている。

「このとおり、クロスボウの射線は直線。それも二本撃つことで的中率は上がる。
しかし裸の鹿を狙ってこの程度だ。これが鎧を着た人間なら相当の力と精密さが要るだろうな」

クロスボウを下ろし、窓から空を見上げた。雨が降っている。
どうやらこの晩はこの要塞で過ごすことになりそうだ。
「ついていないようだ。シャドウ、今夜はここに泊まらせてもらう。
…「死の賢者」とやらが出なければいいものだな」

2016/04/08(金)05:09:05.61(Qk6jaXPx.net)


13シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/25(金) 投下分sage]

AAS

NG

>「三人で、などは不可能だろう。私は何度も戦場で撤退を経験している」

信じられぬのも無理はない。
だがあえてそれ以上の説明はしなかった。賢者の存在を知られたくは無い。

>「あなたは見たところ弓使いではないようだな。エルフの割に、他の文化に精通し過ぎている」

マキアーチャが微かに笑う。
人の失敗がそんなに面白いか、と睨み返すが‥ついつられて苦笑した。不思議な女だ。
彼女はクロスボウを構え、2本の矢を放った。そんな短い弓で飛距離が出るものだろうか‥?
予想に反した重い発射音とともに、矢の1本が鹿に命中する。思わず漏れる感嘆の口笛。

>「これが鎧を着た人間なら相当の力と精密さが要るだろうな」

「だろうな」などと他人事のように言っているが‥‥戦場を生き抜いてきた女だ。
実際に鎧を着た人間を射った事があるのだろう。「相当の力と精密さ」によって。
あれが自分に向けられていたらと思うと背筋が寒くなる。

鹿は後ろ脚をクタリと曲げ、その場に蹲った。致命傷ではないが森で生きていく事は出来まい。ならば。
懐から短剣を取り出し、木の鞘を抜いた。銀色に鈍く光る切っ先を鹿に向ける。

【風の御使い 荒ぶる御霊よ 諸刃の剣に纏いて我が意志に答えよ】

エルフ語のスペルと共に額の印が青白く輝いた。空を裂く音を立て、短剣はまっすぐに森に飛んで行く。
意志を持つかのように獲物の周囲を旋回、その首筋を斜めに深く切り裂いた。
血飛沫を上げ倒れる鹿に驚き、仲間の鹿が森の奥へ消えた。

走れば20秒たらずの距離を【転移】の魔法を使って移動した。
たった20秒が惜しかった。急がねば死体は他の肉食獣に奪われてしまう。
まだ唸りを上げ旋回する剣を横薙ぎに掴み、鹿の「あばら」周辺だけを切り取る。
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2016/04/08(金)05:10:29.08(Qk6jaXPx.net)


14マキアーチャ ◇hsZ84b.sAE [2016/03/26(土) 投下分sage]

AAS

NG

シャドウがスペルを唱えると、マキアーチャが弱らせた鹿に止めを刺した。

「あ…」
そこまでするつもりはなかったのだが、もう起こってしまったことは仕方が無い。

転移魔法らしきものを使い、気がつけばシャドウは鹿肉を持ってこちらに来ていた。
「そこまでしなくとも…まあ、感謝しよう」
腹が減っていたのは確かだ。礼が自然に出た。

シャドウは無言で地下へと来るよう促す。
「賢者」とやらが眠りを覚ますかもしれない。マキアーチャの足はゆっくりとシャドウとつけた。
しかし…

そこは食料庫のようだった。
>「鹿肉のソテーに合うと思わないか?」
マキアーチャにシャドウが迫り、耳元へと近づく。ドキリとしていくのが分かった。
>「ディナーの後‥‥二人きりで夜を明かそう」
「その最中(さなか)で聞かせてくれ。‥‥死の賢者とは何か‥‥君の本当の目的とは‥何か」

「あ…その、だな」
マキアーチャはすっかりとシャドウの仕草にうっとりとしていた。
一晩の間、男に守って貰えるのならば、それも悪くはない。元々そういう性格だ。
ワインを飲み、食事を口に入れながら久々に落ち着いた気分になっていた。
ただ、「死の賢者」というたまたま口から出た言葉にそこまで拘る理由については聞かないが。

マキアーチャがやがて、弓を置いた。
「良いだろう。共に夜を明かすことを…歓迎する。戦うつもりはない。一晩限りならな…
目的など初めからない。だが…「死の賢者」がここに居るという噂ぐらいなら知っている。これだけだ、さぁ、夜に感謝すればいい…」
食事を終え、体を横たえる。顔が紅潮し、脈が速くなっていた。

2016/04/08(金)05:11:34.90(Qk6jaXPx.net)


15シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/26(土) 投下分sage]

AAS

NG

>「あ…その、だな」

意外にも、マキアーチャは抵抗しなかった。むしろうっとりと自分を見つめ‥その眼に敵意の色はない。
知らずに【魅了(チャーム)】のスペルでも使ってしまったのだろうかと疑うほどだ。
種族は違えど所詮は雄と雌。身体を求めあうは自然の摂理か‥
マキアーチャの顎に手をかけ、唇に自分のそれを重ね合わせようと近づき‥‥寸前で止めた。愉しみは後だ。

赤ワインを数本、食材をいくつか籠に取り、最上階の医務室に向かった。
続き部屋になっている厨房兼食堂のテーブルに籠を置く。手伝おうとするマキアーチャを手で制し、準備に取りかかる。
まずは‥‥暖炉の火を厨房の炉辺に移す事からだ。


ほどなくしてテーブルには宮廷料理と見紛う出来栄えの皿が並べられていた。
メインはもちろん獲りたてのジビエだ。ローストした鹿肉のオレンジソースかけ。骨付きの赤ワイン煮込み。
付け合わせは香草のサラダ、パセリを散らしたポタージュ。
デザートは中庭の百合根を使ったオリジナルのターキッシュ・ディライト(=トルコのロクムに相当)。
どれも皇帝付きのシェフ直伝だ。
初めて人間の料理を口にしたときの感動が忘れられず、頭を下げ頼み込み仕込んでもらった結果だ。
見事な細工の銀の燭台と食器がテーブルの料理を引き立てている。
あのドワーフに感謝しなければ、と胸で十字を切る。
「聖なる糧に大いなる喜びと感謝を」
ナイフを手に取った。彼女の口に合うといいのだが。

グラスを触れ合わす音。ナイフを入れる金属音。燭台の蝋燭の‥ゆらめく炎の音。
普段の食事ではあり得ない音の数々を彼は愉しんでいた。窓を打ちつける雨音までも二人を祝福しているように感じる。
ワインが1本、2本と空くにつれ‥二人の距離が狭まる。当たり障りのない会話。こんな夜もあっていい。

食事が済み、皿を水場に運ぶ。またしても手伝おうとするマキアーチャを止め、皿を四角い箱のようなものに押し込める。
【水魔法】を用いる食洗器だ。皿の数が多い時は便利だ。
額の五芒星から放たれる光が黄色に変わる。これが赤くなった時‥魔力は底をつく。今日は少々使いすぎた。
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2016/04/08(金)05:12:52.11(Qk6jaXPx.net)


16ワイズマン ◇YXzbg2XOTI [2016/03/26(土) 投下分sage]

AAS

NG

>>15
【思考が漏れ出ているぞ、亜人。
なぜ、このわたしが君の交尾の機会に配慮しなければならないのかね?

自身を以ってベスマ要塞の門番を任ずるなら、役目を何より優先して果たせ。
わたしは忙しい。わざわざ客の相手をする時間はない。

さあ、往きたまえ。敵ならば殲滅し、流れ者ならば適当にいなせ。
誰一人として、わたしの研究棟には近づけさせないように……】

地の底から響くような、低い声。
それは、要塞の遥か最下層に居を構える『死の賢者』のもの。
一夜の宿を望む娘には取り合わず、シャドウへ一方的に用件を告げると、それはほどなく絶えた。

【当PCのご愛顧ありがとうございます。楽しそうなのでちょっとお邪魔を。失礼致しました】

2016/04/08(金)05:14:57.32(Qk6jaXPx.net)


17オーク氏族『オド・オ・オボシュ』 ◇QHUMtA89T. [2016/03/26(土) 投下分sage]

AAS

NG

オーク、という種族がいる。
豚面の亜人種(デミ・ヒューマン)である。
古文書に曰く、その性、凶暴にして貪婪。怠惰にして狡猾。
略奪をもって是とし、姦淫をもって善とす。

かつては神代の時代に豚頭の魔王オルクスの眷属として武勇を揮ったとされるが、今やその面影は微塵もない。
森や渓谷、人里離れた迷宮など、どこにでも群れを作っては血の繋がりの濃い『氏族』を形成する。
氏族は一匹の『族長(チーフ)』を頂点とし、上意下達の一枚岩となってしばしば人里に下り、略奪行為を働く。
その文化程度は甚だ低く、精神的にも愚劣極まりないものであり、人間やエルフ等とは基本的に相容れない。
畢竟、国や地域を問わず討伐すべき対象とみなされている存在である。

そして。

「ブッヒヒ……ここがメグマ要塞かァ。なかなか立派なところじゃねェか」
「バカ、メグマ要塞じゃねエよ。ベクダ要塞だって、族長が言ってたろォ?」
「そうだったか?忘れちまったよ、ブヒヒヒ!」
「まあ、どっちでもいいやな!とにかく要塞の場所はわかったんだし!おい、族長にご報告だァ!」
「ブヒーッ!」
「ブヒヒ!」

今、ベスマ要塞は新たな侵略者を迎えようとしていた。

2016/04/08(金)05:16:03.75(Qk6jaXPx.net)


18オーク氏族『オド・オ・オボシュ』 ◇QHUMtA89T. [2016/03/26(土) 投下分sage]

AAS

NG

名前:オーク氏族『オド・オ・オボシュ』
年齢:まちまち
性別:全員男
身長:1m程度から2m越えまで様々
体重:総じて肥満
種族:オーク
職業:蛮族
性格:凶暴、強欲、性欲旺盛
長所:戦闘慣れしており、筋力ならびに防御力は人間やエルフを上回る
短所:基本バカである。魔法は知らない
特技:どんな種族の女でも妊娠させることが可能
武器:棍棒、錆びた剣、古びた槍など様々
防具:腰ミノ(基本裸)
所持品:特になし
容姿の特徴・風貌:豚面の亜人種。
簡単なキャラ解説:50匹程度で群れを形成しているオークの氏族
ここに来た目的:ベスマ要塞を新たな根城とし、近隣の町や村を襲おうと画策している

【よろしくお願い致します。なお、やられ役ですので勝つ気は微塵もありません】

2016/04/08(金)05:17:08.82(Qk6jaXPx.net)


19マキアーチャ ◇hsZ84b.sAE [2016/03/27(日) 投下分sage]

AAS

NG

「ん…」
シャドウの体がのしかかり、接吻が始まった。
男女のシルエットが一つになろうとしている。

しかし…
>【亜人、客だ】

どうやら妙な声が響いた、これが「死の賢者」だろうか?
マキアーチャは先ほどのことは成り行きに過ぎないので、シャドウに対して気を使ったが、

>「共に来るか?招かれざる客かも知れないが」

という言葉に即答し、向かった。
と、シャドウの足が止まる。何者かと会話をしているようだ。


「で?結局のところ、私は眠れないようだな」
不機嫌そうにマキアーチャが要塞の下を見下ろしながら言った。

どうもオークの一団がここベスマ要塞に近づいてきている。
オークというのは与しがたい相手だ。人間のように整然と攻めてはこない。
ましてやこの人数だ。かつてここに居たという伝説の戦士達のようにはいかないだろう。

既に門は閉めてある。
オークたちは草原や木のあるあたりをうろうろとしており、まだこちらを攻撃する様子はない。

マキアーチャはもしもの場合は撤退することも考え、このまま眠ることよりも撃退するという選択をした。
「シャドウ、とりあえず数発撃って様子を見る」

マキアーチャは射程の長い長弓を構え、一発を一番手前で見張りをするオークに向け放った。
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2016/04/08(金)05:18:02.28(Qk6jaXPx.net)


20シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

>「で?結局のところ、私は眠れないようだな」

食堂の窓から外をうかがうマキアーチャの声には苛立ちが混じっている。
文句はあちらさんに、といった風に外を眼で差し、肩をすくめて見せた。
客はオークの群れ。
知性は無い、と侮りがちだが中々どうして。
「街」を作らぬエルフに取っては厄介な相手だった。
騒ぎに駆けつけたあの時も‥尻から顎にかけて杭を穿たれた同胞の姿が今でも眼に焼き付いている。
男は殺す、女は犯してから殺す。人が戦場の狂気を借りて行う行為を当然のこととする連中だ。

「こっちへ」
屋上へは向かわず、マキアーチャを銃眼(=矢を射るための狭間)のある場所へと案内した。
見晴らしは相当悪いが、春を迎えたばかりの雨はまだ冷たい。体力を消耗するのは避けたい所だ。
この要塞に設えられた銃眼は縦に長く、長弓の射手には有利だ。反面、横弓であるクロスボウには不向きとされる。
マキアーチャが弓を引き絞り、第一矢を放つ。
案の上、暴風に煽られうまく飛ばない。が、すぐにコツを掴んだらしい。非人間的な動物の悲鳴が耳に届く。

>「シャドウ、やったぞ。ここは死の賢者とやらの加護があるんだろう?」

「‥加護?」
思わず問い返した。言われて見て初めて気づいた。自分はまだ「加護」を受けていない。
もうひとつ。魔力を消耗した今‥使える呪文は一度が限度。
「容易には門の扉は破れまい。しばしここを頼む」
そう言い残し、【転移】のスペルを唱え、その場から消えた。

2016/04/08(金)05:19:10.09(Qk6jaXPx.net)


21シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

移動先は賢者の住まう研究棟のひとつ手前、あの一夜の決戦が行われた回廊内。
座標を把握しているからこそ転移可能な場ではあるが‥‥来ていいと許された場でも無い。
こめかみに浮かんだ玉の汗が頬を滑る。手の震えが止まらない。言葉を発しようと口を開くが‥かすれ声すら出ない。
これが‥‥一夜にして身体に植えつけられた恐怖という名の呪縛。
膝を折り、両の腕を左右に広げた。深く息を吸い‥‥吐きだす。

「賢者よ!!崇高にして偉大なる我が主(あるじ)よ!!」

返事はない。回廊を漂う死霊の群れが、まるで主人の代わりを務めるかの如く引き攣った叫びを上げる。
「今一度その御姿を拝顔したく参上した非礼、お詫びいたします」
「未だ契約による加護を受けぬこの身、過分なる命を受けるに及ばぬ身なれば」
「その御身を以て我が額(ぬか)に契約の印(しるし)を授けたもう‥」

魔術のスペルにも似るシャドウの言葉は、略式ながら主との契約を結ぶ形式、儀式に乗っ取ったものだった。
いま額にある正五芒星は帝国の印、以前はこれを介して本国より魔力の供給を得ていたのだ。
だからこそ死霊を従えるという大技も使えた。
だが、失われた帝国はもはやその役を為さない。彼自身の魔力では到底門番の任など負える筈もない。
賢者と契約を結ぶことは、彼自身には必要なことだったのだ。

「賢者よ!ご返答を!!」哀願の叫びが虚しく響く。

「よもや‥こうお考えか!?この額にある‥帝国の印が邪魔だと!!?」
シャドウは短剣の鞘を抜いた。眉間に切っ先を当て、一息に額を薙ぐ。
両手の平を床につき、深く首(こうべ)を垂れた。ポタリ‥‥緋色の雫が白い大理石に新たな彩りを与える。

「帝国の犬は‥今ここに‥ただの犬となり果てて御座います‥」
彼はそのまま動かなかった。ひたすら賢者の返答を待つつもりである。


「我が真(まこと)の名はヴェルハルレン。主を裏切らぬ印なれば、お受け取りを」

2016/04/08(金)05:20:22.65(Qk6jaXPx.net)


22マキアーチャ ◇hsZ84b.sAE [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

>「こっちへ」

「こんなものが…あったとはな」
銃眼。こちらからの攻撃はきわめて容易だが、向こうからこちらを狙うのは至難をきわめる。
はっきり言ってたいした腕ではないが、矢もふんだんにあるようだ。

>「容易には門の扉は破れまい。しばしここを頼む」
そう言ってシャドウはその場を離れる。その瞬間マキアーチャの胸に不安がよぎった。

「さびしくなるな」
シャドウの背中にそう声をかけると、オークの軍勢に向き直る。

迫り来るオークに次々と長弓から矢を浴びせかける。
攻撃は外れが7割だが、速射と敵が殆ど飛び道具を持っていないこと、銃眼のおかげで
門に辿りつくまでに5、6人のオークを戦闘不能にし、10人程度を負傷させた。
長弓はボロボロになり、途中からはクロスボウを隙間から撃ち込んだ。
倒れたオークのうち何人が死んだかは不明だ。生命力のある生物だ。なかなか死ぬとも考えられない。

さて、残った40程度のオークが門に様々な武器をもって攻撃を仕掛ける。
その中には破壊槌もあった。近いうちに破られるだろう。

「くっ、どうしたらいい?」
そうは言っても一人では限度がある。撤退するか…
そこまで考え、屋上があることに気付いた。
クロスボウを持ち、屋上の門の真上の位置に陣取る。そこには大小の石が用意されていた。

石を転がしながら、破壊寸前の門を見、さらに周囲を見回す。もし進入されたらどちらから脱出しよう。
よく見ると先ほど上がった場所以外にも梯子が用意さえている。

マキアーチャは決して強くない腕力で必死に投石を続け、さらに数人のオークを頭から潰し戦闘不能にした。
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2016/04/08(金)05:21:24.98(Qk6jaXPx.net)


23オーク氏族『オド・オ・オボシュ』 ◇QHUMtA89T. [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

「ブヒッ!?な、なんだ!?」
「矢だ!要塞から攻撃されてるぞオ!」
「この要塞は廃墟なんじゃなかったのかよゥ!?ブヒーッ!」

マキアーチャの示威行動に対し、斥候として要塞に近付いていた数匹のオークが喚く。
数発当たりはしたものの、殺傷可能射程の範囲外だ。致命傷には程遠い。
無抵抗とばかり思っていた要塞からの、思いもよらぬ先制攻撃。
オークたちはしばらくブーブー、ブヒブヒと鼻息荒く吼え立てたが、ほどなくそれぞれ武器を構えた。
――尤も、戦術や組織だった行動といったものは無い。そこまで上等な脳味噌など持たない生物である。

矢を警戒し、おっかなびっくりといった様子で要塞に接近しかけていたオークたちであったが、そのうちの一匹が不意に鼻をひくつかせる。

「どォした?」
「におう、ニオうぜえ……。こりゃ、メスのニオイだァ」
「……本当だ。メスのニオイだ。こりゃ、人間のメスのニオイじゃねエか。ブヒヒ、要塞にメスがいるのかァ?」

オークは聴覚と嗅覚が非常に発達しており、目よりもにおいで物事を把握する。
要塞に近付いたことで、マキアーチャの僅かな体臭を嗅ぎ当てたのだ。
それまで矢の洗礼にやや怯えていたオークたちは、俄然いきり立った。

「ブヒヒヒッ!メスは族長に献上だァ!さぞかし喜んでくださるだろォぜ!」
「バカ野郎!どこのメスとも知れねェメスを、いきなり族長に差し出しちゃヤベェだろォが!?」
「あぁ〜?ってことは……」
「まずは、俺たちで2〜3回毒見してからに決まってンだろォ!?ブヒヒヒヒッ!」
「ブヒーッ!俺が一番な!」
「オ、オデも、メズと犯りだぁぁい゛!」

下劣な連中である。また、清潔にするという習慣がないため、その身体は常に悪臭を纏っている。
オークどもが要塞に接近したなら、生臭いにおいがマキアーチャとシャドウの嗅覚を刺激するだろう。
具体的に言えばイカのにおいだ。栗の花でもよい。
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2016/04/08(金)05:22:15.92(Qk6jaXPx.net)


24ワイズマン ◇YXzbg2XOTI [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

ベスマ要塞の隠された地下への入り口、その先にある螺旋階段を下った果て。
神殿のような静寂に包まれた地下回廊に、シャドウの声が響く。

>賢者よ!!崇高にして偉大なる我が主(あるじ)よ!!
>帝国の犬は‥今ここに‥ただの犬となり果てて御座います‥

哀願するその声が、回廊の高い天井に木霊する。
どれほど時間が経過しただろうか、薄暗い回廊のどこからか、不意にゆっくりと低い声が響いた。

「……君の主になった覚えはない。わたしが生者を好まないということ……知っていると思ったがね」

声はすれども、姿はない。シャドウの前方には、研究棟への扉を封印した七つの結界がほの白い光を放っている。

「わたしは本来、ここには存在しないことになっている者だ。いない者の力を当てにしてどうする?
地上のことは、地上で勝手にやればいい。わたしは、ここへ誰も近付いてほしくないだけだ。
そして、それは君も例外ではない」

>我が真(まこと)の名はヴェルハルレン。主を裏切らぬ印なれば、お受け取りを

「契約だと。主だと。わたしから平穏を奪い、あの子を奪い、そしてその上魔力まで吸い上げようというのか。
勘違いするな……わたしはまだ、君を許したわけではない。
わたしにとっては、君もまだ気を許すに足る存在ではない――それを忘れるな。
君が要塞から去らないから、スケルトン代わりに歩哨として使っているだけなのだ。君はあくまで、死体の代わりでしかない」

辛辣な言葉を投げかける。

「……そんなに、わたしと契約がしたいのか?わたしが何者か知った上で、そんなことを言っているのか?
死そのものであるわたしに対して。ならば――」

幾許かの静寂。少しの間を置くと、ワイズマンはシャドウの前に姿を見せぬまま、
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2016/04/08(金)05:23:08.99(Qk6jaXPx.net)


25オーク氏族『オド・オ・オボシュ』 ◇QHUMtA89T. [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

「ブッ!ブヒッ!矢ァばっかり撃ってきやがってェ!」
「怯むな!門に取り付いちまえばこっちのもんだぜ、ブヒヒッ!」
「畜生、痛ェじゃねエか!あのメス、とっ捕まえて気が狂うまで犯してやるぜェェ!」
 
一旦女が絡むと、オークの士気は高い。食欲と性欲を原動力として動いているような連中である。
負傷によってオークの兵力は若干低下したが、それでも一旦ついた勢いは留まるところを知らない。
マキアーチャの矢雨を潜り抜け、降り注ぐ岩を避けて正門に到達する。
ここまでで落石を受け十数匹が負傷、または脳天に直撃を受けて死んだが、オークにとっては些細な出来事である。
オークは共食いさえ厭わない。死んだ時点でそれは仲間ではなく単なる肉塊であり、食料としか見なされなくなるのだ。

「破城槌の用意だ!」
「ブーッ!」

オークのひとりが叫ぶと、後続の数人が破城槌――という名の単なる丸太――を抱えてくる。
最初から要塞を攻略するという目的の元、用意されていたものだ。
その辺の木を伐っただけの丸太でも、あるだけマシというものであろう。オークの分際で準備がいい。

ドォォンッ!ドガァァァッ!

「ブーッ!」
「ブヒッ!ブヒヒッ!」
「ブッヒヒヒーッ!」

幾度かの破城槌による吶喊により、門を閉ざしていた閂がへし折れる。
オークたち20匹ほどが、野蛮な雄叫びをあげながらベスマ要塞になだれ込む。
まだマキアーチャとは鉢合わせしないだろうが、嗅覚の発達しているオークのことだ。遭遇するのは時間の問題だろう。
そうなれば、オークたちは寄ってたかってマキアーチャを辱めようとするに違いない。
オークにとっては、とにかく相手が女であれば何でもよいのである。
――なお、穴があれば男でもよしとするオークも相当数いる。

2016/04/08(金)05:23:51.58(Qk6jaXPx.net)


26ワイズマン ◇YXzbg2XOTI [2016/03/28(月) 投下分sage]

AAS

NG

「……騒がしいな」

上層の戦いを水晶球で確認しながら、ワイズマンは呟いた。
シャドウはまだ、回廊でひれ伏しているのだろうか?そんなことをしても、何の意味もないというのに。

しかし。

「上にいるのは、射手の娘か……。ああ、人間の、射手の娘。なんと奇遇なことだろう。
あの子を思い出す。わたしのことを大好きと言ってくれた……わたしの大切なあの子に」

そう昔語りするように言うと、研究棟の一角に視線を向ける。
愛用の安楽椅子に座し、眠るように瞼を閉じた、年若い少女の亡骸へ。
まるで生きているかのような、その亡骸の髪に一度触れると、ワイズマンは小さく息を吐いた。
そして、短く詠唱を唱える。

「君に力を貸すわけではない。上にいる娘を死なせたくないだけだ。
いいかね……敵を完全に撃退しろ。そして、あの娘を護れ。絶対に死なせるな。
あの娘に、わたしの愛しい眠り姫の二の轍を踏ませてはならない」

そんな言葉と共に、シャドウの前に一枚の小さな護符が現れる。
特徴的なワイズマンの魔術紋様が描かれた、手のひら大の護符だ。

「それを丸めて飲み下せ。君に魔力を与えてくれるだろう。――だが、注意したまえ。
それは『生命力を魔力に変換する護符』だ。使い過ぎれば命にかかわる。
強力な魔法を使えば、それだけ体力の消耗も激しい。使い終わったらすぐ吐き出すがよかろう。
尤も、君が死のうがわたしには何の問題もないがね」

そんなことを言って、水晶球越しにシャドウを見る。

「いつまでわたしの聖域にいるつもりだ?さっさと出ていくがいい。
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2016/04/08(金)05:24:39.34(Qk6jaXPx.net)


27シャドウ ◆ELFzN7l8oo [sage]

AAS

NG

……長い……時。

いつしか額から流れる血は止まり、大理石を染めた朱色の血がどす黒くその色を変える頃、ようやく返事は返ってきた。

>契約だと。主だと。わたしから平穏を奪い、あの子を奪い、そしてその上魔力まで吸い上げようというのか
>勘違いするな……わたしはまだ、君を許したわけではない

地を震わすようなワイズマンの声。言葉尻こそ柔らかいが、その実は冷たく素っ気ないものだった。
思わず顔を上げ眼を見開く。
「そんな……」
予想はしていた。一蹴される覚悟はあった。
だが一方で期待もしていたのだ。手前勝手とはいえ露払いをかって出た自分を、少しは認めてくれるのではないかと。
唇を噛みしめ、しかし彼はそこを動かなかった。どの道後がないのだ。魔力を持たぬ魔導師はネズミ一匹に劣る。
打算が彼をここに導いた。しかし彼は気づいていない。
秘宝すなわち最高の叡智を求めるが故に……いつしか賢者そのものを求める自分の気持ちに。
先に仕えていた帝国の王以上に……心から賢者を主としたい、そんな思いが実際に芽生えていた事を。
次なるワイズマンの言葉が、それを思い知らせることになる。

>君が死体になったら、考えるよ

「死体になったら……考える……?」
賢者の言葉をゆっくりと反芻する。血ではない何かが両の頬を伝い、床に落ちてピシャリと跳ねた。
手で頬をぬぐい、それが涙だと気づくのにしばらくかかった。
彼は今まで泣いたことがない。どういう時に人が泣くのか良く解らない。
「死体になったら……考える……」
震える手が床に転がる短剣を拾い上げた。切っ先を喉元に押し当て、力を込めるが……

キンッ!という冷たい音を立て、剣が石床に転がった。
はははは……
乾いた笑い。高い天井に描かれた紋様がじわりと滲む。
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2016/04/08(金)05:41:24.46(Qk6jaXPx.net)


28シャドウ ◆ELFzN7l8oo [sage]

AAS

NG

≪ドォォンッ!ドガァァァッ!≫

門を破る振動を感じ取り、我に返った。
忘れていた。自分が死んだら……マキアーチャはどうなる?たった一人でオークの襲撃を受けている彼女は!?
その時。

>君に力を貸すわけではない。上にいる娘を死なせたくないだけだ
>いいかね……敵を完全に撃退しろ。そして、あの娘を護れ。絶対に死なせるな

ワイズマンの言葉と共に、眼前にヒラリと何かが舞った。
護符だった。覚えのある紋様が描かれているそれを、そっと手に取る。
「おお……」
感動で声が震える。力を貸さないといいつつ貸してくれるという……賢者は……ツンデレだろうか?
それで……これはどうすれば?

>わたしの愛しい眠り姫の二の轍を踏ませてはならない

「え?」
ワイズマンの続けた言葉はシャドウに2度目の衝撃を与えた。研究棟のあるであろう結界の向こう側を見つめる。
イルマ……?……まさか……そこに居るのか……?
蘇生術は失敗した。自分が生きているからイルマが生きていないのは確実だ。
だが……半永久的に身体を保存する効力だけが……残されたとしたら……だから……眠っている……そうなのか?
ずっと今まで……一緒に居たのか……?賢者と……一緒に……?
嫉妬の炎がジリリと胸を焦がしたが、それがどちらに向けられるものか良く解らない。
そんなこんなでシャドウはワイズマンの話をほとんど聞いていなかった。
『丸めて飲み下せ』としか。

「ご厚情……有難く頂戴いたします」
言われた通り、護符を手に握りつぶり、一息に飲みこんだ。

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2016/04/08(金)05:50:00.48(Qk6jaXPx.net)


29シャドウ ◆ELFzN7l8oo [sage]

AAS

NG

シャドウが出現したのは丁度マキアーチャが梯子を降りた、そのすぐ傍だった。
彼女の手にクロスボウがあるのを確認し、声をかける。
「援護を!」
門の方からは歓声を上げて向かい来るオーク達。逃げても仕方がない。ここで向かい討つ。
オーク達の姿が視界に入る。
不意に腹の底から沸き上がる魔力。身体中に漲(みなぎ)るこの力。これが……‘賢者’の力……!!
先頭の2匹がこちらに向かってきたが、彼女の援護がある。構わず彼等に向かって右手を伸ばす。

【天地(あめつち)の精霊よ 我が力の源(みなもと)を拠り所とし  大いなる雷(いかずち)を召喚せん】

おそらく火炎球の次にポピュラーな攻撃呪文、雷撃。
以前の彼なら出せる雷は1本。詠唱を延長したとしても2本。
雷鳴と共に出現したのは光の壁(カーテン)。いや、壁を思わせるほどの雷光の束だった。
雷光は外壁を内張りする陣形を取り地に降りると、20匹のオークを一瞬で灰塵と化した。
ついでに城壁を取り囲む外壁も木端微塵となる。

「!!?」
もっと力を抑える必要があると思ったその時、視界がぐらりと揺れた。魔力の消耗ではない、生命力の消費によるものだ。
賢者の言葉をまともに聞いていなかった彼は、魔力の源が自身の生命力であることを理解していない。
一方、仲間の死にオーク達は怯まない。残り10数匹が咆哮と共にこちらに向かってくる。

【雷(いかずち)よ!!】

呪文詠唱を最小限にとどめて放つ。2本の雷撃が8匹を消し炭に変える、残り5匹!
いきなり眼の前がブラックアウトした。冷たい土に手のひらが触れる感覚。
マキアーチャの手持ちの矢はあと何本か。確認したいがうまく口を利く事が出来ない。
5匹のオークがこちらに向かって来る気配。
その中に1匹、オークにしては知性を思わせる口ぶりの者が居る。何かしら指示を送り、それに呼応する声。
腕を掴まれた。振り払おうとしても身体が言う事を聞かない。鞭を取り上げられ手足に巻かれた。

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2016/04/08(金)05:52:43.78(Qk6jaXPx.net)


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