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【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3

13シャドウ ◇ELFzN7l8oo [2016/03/25(金) 投下分sage]

AAS

NG

>「三人で、などは不可能だろう。私は何度も戦場で撤退を経験している」

信じられぬのも無理はない。
だがあえてそれ以上の説明はしなかった。賢者の存在を知られたくは無い。

>「あなたは見たところ弓使いではないようだな。エルフの割に、他の文化に精通し過ぎている」

マキアーチャが微かに笑う。
人の失敗がそんなに面白いか、と睨み返すが‥ついつられて苦笑した。不思議な女だ。
彼女はクロスボウを構え、2本の矢を放った。そんな短い弓で飛距離が出るものだろうか‥?
予想に反した重い発射音とともに、矢の1本が鹿に命中する。思わず漏れる感嘆の口笛。

>「これが鎧を着た人間なら相当の力と精密さが要るだろうな」

「だろうな」などと他人事のように言っているが‥‥戦場を生き抜いてきた女だ。
実際に鎧を着た人間を射った事があるのだろう。「相当の力と精密さ」によって。
あれが自分に向けられていたらと思うと背筋が寒くなる。

鹿は後ろ脚をクタリと曲げ、その場に蹲った。致命傷ではないが森で生きていく事は出来まい。ならば。
懐から短剣を取り出し、木の鞘を抜いた。銀色に鈍く光る切っ先を鹿に向ける。

【風の御使い 荒ぶる御霊よ 諸刃の剣に纏いて我が意志に答えよ】

エルフ語のスペルと共に額の印が青白く輝いた。空を裂く音を立て、短剣はまっすぐに森に飛んで行く。
意志を持つかのように獲物の周囲を旋回、その首筋を斜めに深く切り裂いた。
血飛沫を上げ倒れる鹿に驚き、仲間の鹿が森の奥へ消えた。

走れば20秒たらずの距離を【転移】の魔法を使って移動した。
たった20秒が惜しかった。急がねば死体は他の肉食獣に奪われてしまう。
まだ唸りを上げ旋回する剣を横薙ぎに掴み、鹿の「あばら」周辺だけを切り取る。
風を纏わせた刃は切れ味が良く、血糊もつかない。
刀身を鞘に納める。パチンという音が心地良く響いた。この音は好きだ。事の終わりを告げる音だ。

鹿肉の包みを下げて戻ってくるまでこの間1分足らず。
‥ふと空を見上げる。額に降りかかる雨が数滴。嵐の訪れを告げる遠雷の音。

>「ついていないようだ。シャドウ、今夜はここに泊まらせてもらう。
>…「死の賢者」とやらが出なければいいものだな」

一瞬耳を疑った。泊る事なら問題ない。むしろ大変結構。しかしその後‥彼女は何と‥‥‥?

シャドウは無言でマキアーチャを要塞内部に招き入れた。地下への階段を降り、地下食料倉庫につき当たる。
レディーファースト、とばかりに開けた扉の横に立つ。

重い扉を後ろ手で閉めた。先を行く彼女の足が止まる。
暗闇の中スペルを紡ぐと、白々とした魔法の明かりがゆらりと二人の影を作りだした。
数百の人員を賄う食料倉庫はただの広さでは無い。天井は高く、ひしめき合う棚にはおびただしい食料が備蓄されている。
相当古いものの筈だが‥どれも痛んではいない。保存に関する魔法が施されているのかも知れない。
倉庫の一角のワインセラーに足を運ぶ。

「鹿肉のソテーに合うと思わないか?」
ヴィンテージものの赤を一本彼女に差し出し‥受け取ろうとした彼女の腕を掴んだ。
ゆっくりと、しかし強引に壁際に追い詰め‥‥耳元に口を近づける。

「ディナーの後‥‥二人きりで夜を明かそう」
低い‥吐息に近い声音で囁く。宮廷時代、これで落ちなかった女はいない。
「その最中(さなか)で聞かせてくれ。‥‥死の賢者とは何か‥‥君の本当の目的とは‥何か」

彼の眼に殺気の色が浮かんで消えたのを彼女が気づいたかどうか。これを挑発と受け取れば、ここで一戦交えることになる。

2016/04/08(金)05:10:29.08(Qk6jaXPx.net)

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