>>241 パテカトルの万脳薬/大きな脳は神経細胞がスカスカ!?
脳研究者・池谷裕二
週刊朝日(2018/06/29), 頁:40
https://www.zasshi.jp/pc/action.php?qmode=5&qword=%E9%80%B1%E5%88%8A%E6%9C%9D%E6%97%A5&qosdate=2018-06-19&qpage=3 知能が高い人ほど、脳の神経線維が発達しておらず神経回路がシンプル――。そんな以外なデータをルール大学のゲンチ
博士らが先月の「ネイチャー通信」誌で発表しました。
一般に、脳が大きく神経細胞が多いほうが知能が高い印象があります。実際、進化とともに脳が肥大化している事実が厳と
してあります。こうした常識に照らせば、冒頭のデータは直観に反します。丁寧に説明していきましょう。
まず押さえておきたい点は、130年前には、すでに大ざっぱな見積もりながら脳のサイズと知能に正の相関が見いだされて
いる事実です。この結論は現在も覆っていません。MRIを用いた精密な計測でも「脳が大きい人ほど賢い」という身も蓋もない
事実が示されているのです。
(中略)
博士らは約400人の脳で神経線維の方向性や密度を調べたところ、知能指数の高い人ほど神経回路が過疎化されスカスカ
であることがわかりました。この意外なデータを、博士らは「神経回路が簡素なほうが演算が効率化されて直接的な情報処理
が可能になる」と説明しています。
(中略)
では「脳が大きいほど賢い」という従来のデータは一体何だったのでしょう。
ヒントはアインシュタインの脳にありそうです。アインシュタインは誰もが認める天才です。しかし、彼の脳を解剖しても、とくに
神経細胞が多い事実は見えてきません。むしろ「グリア細胞」という神経細胞以外の細胞が多かったのです。グリア細胞は
神経回路の間隙を埋める細胞です。「グリア細胞が豊富」という事実は、そのぶん神経回路が低密度だと言い換えることが
できます。
「大きな脳」の実体は、もしかしたら、神経回路がスカスカであることの裏返しなのかもしれません。