クイックメニュー
スレタイ検索

僕・私の自由帳

167名前はいらない

AAS

NG

むかしもむかし
この国はもっとよくなると
皆信じて疑わなかった頃のはなしです
鳥籠のなかの三日月や
壜のなかの城
スノードームに眠るお姫様や
ばらの王子様が
決った時刻に鐘を鳴らすのでありました。

「僕の前に道はできるのなら
 後に残るのは塩の町だろう
 さあ、白馬の騎士に道をあけてください!」

何も見えません、私は盲です
新宿駅前で焼身自殺があったというのは
本当ですか?

海水浴場で溺れ死んだ子供の夢は
自衛官になることでした。
嘘じゃありません、
まかりまちがえても
裕福とはいえない家庭に産れた子供は
みんな大人達の顔色を読むことには長けているものです。

「あのマンションも取壊しになるそうね」
「オリンピックの夢の跡なんてそんなものだよ。」

「開発が進んでいた副都心も今やがらんどうですよ」
「綜合精神病院が建つらしいよ、三つも。」

「放射能であれになっちゃった野菜とか、どうしてるんでしょうね。」
「ああ、埋めてるらしいよ、あれになっちゃった鶏とかと一緒に。」

ホテルのロビーで会話をしている宿泊者達。
突如照明燈の明りが落ちる。

「ああ、いつものことですよ、計画停電区域だから、ここ。」

「随分と草臥れてしまったものね――
 なんかこう、全員が年寄になったみたいに。」

彼女の声は聞き流され、独立電源に入れ代わって照明が燈る。
緩やかな音楽の流れ始めるロビーには
愉しげに談笑するひとびと。

明日は屹度今日よりいい日になるだろう
だって、こんなにも笑顔で溢れているのに。

2014/08/05(火)04:01:05.36(pXCnKtcs.net)

名前

メール

本文