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今朝思いついた詩

902茄子@NasubiPoem [sage]

AAS

NG

「蟻と雨に寄せる歌」

空っぽの雨音のその中を
鼻歌が響いてくる。
誰かが壁の向こうを歩いてる。
何だか知らない歌を歌って。
不規則な足音のその中に
変な鼻歌が踊っている。
誰かが壁の向こう側を歩いて行く。
何だか知らない歌を歌って。

電気で揺れる振り子時計のその下の
机の上を、黒い小さな蟻たちが。
チョコチョコチョコチョコ動く。一匹、二匹…三匹いる。
安くて軽いプラスチックな振り子の下の
ノートの上を、黒い小さな生き物たちが
グルグル フラフラ 何かを探し求めるみたく回る。
(ペン先から生まれ出る類のそいつらを美しく並ばせるのが、
ひとまず今ここでの、俺の仕事だ。)

「キミと、もう3年間も、あの音を探している。
第52番目の音を。
僕らは普通、51の音で話す。
それから後は、黙っているか、ぎこちなく触り合った後、
最後にはいつも、次こそあの音を出してやろうとして、そのまま力尽きる。
だからとにかく、不思議な現象が、不思議に見える理由が、
ただ僕がバカだからだとしても、
相変わらず今日もコーヒーに混ざっていくミルクとかを眺めている。」

炊飯器から白い湯気があげる。
物干しの竿には、透明な水滴が一杯ぶら下がって、
その向こう側に、世界が終わりそうに灰色が広がっている。
そんな雨音の中で、ひとまず手元では、この不完全な何かが終わる。
あとはノートの外側へ、はみ出していくだけ。
ただそれだけで今は良いんだ、と、僕は蟻をつまんでは窓の外へと放る。
それから、ノートを閉じて、高く伸びをするんだ。

ノートの中で、
変な奴らが羽を持って、ページも罫線も全部越えて、
全くヘンテコリンなパーティーを執り行っていようが、
僕は一向に構わない。

後で、助手君たちに、聞くだけだから。

(おわり)

2017/09/06(水)22:39:31.21(0l9YjgW5.net)

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