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立トスてレテス・備忘録

1◆p132.rs1IQ [sage]
AAS
◆p132.rs1IQ専用スレです..φ(_ _)m

2019/02/22(金)07:57:46.66(YBvEGoQOF)


993◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

スピード
グレアム・ヨスト
石田 享[訳]
p46
「近づくんじゃねえ。こいつを押したら、貴様の相棒は粉々に吹き飛ぶ。掃除がたい
へんだぞ」そしてハリーに声をかけた。「死ぬ覚悟はできてるか?」
 ハリーは吐き捨てるように言った。
「くたばれ(フアツク・ユー)!」
「国のために捧げる命が一つしかなくて残念だ。知ってるか、これ? 二〇〇年前、
イギリス軍に吊された若者が残した辞世の言葉だ。ところがいまどきのおまわりとき
たらファック・ユー≠ネんて汚い言葉を口にするていたらくだ。情けないご時世だ
ぜ、まったく!」

2023/05/20(土)16:44:10.09(9YBvN8WwA)


994◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

ダンテズ・ピーク
デューイ・グラム
伏見威蕃[訳]
p72
 ハリーは、森にかこまれた湖岸をひとりで歩きだして、枯れた植物や水棲動物の屍骸を捜
した。そうしたものの存在は、地震活動によって湖の底で異常なレベルの二酸化炭素が放出
されていることを示している場合がある。
 二酸化炭素は、火山学者にとって赤旗である。大気や動物の呼吸および代謝の正常な構成
要素である二酸化炭素は、大量にあれば生命を奪う。血中に炭酸が生じ、死にいたる酸毒症
を引き起こす。地中に大量の二酸化炭素があると、やはり酸素を欲する樹木の根が、動物や
人間とおなじように窒息する。つぎに来るときは地中のガスを測定する装置を持ってくるこ
と、とハリーはメモした。
 彼は、さらにあたりの風景に目を配った。魚が何匹か浮いており、その先には藻(も)のたぐい
が枯れて浮かんでいる。岸では樅(もみ)が何本か倒れる寸前だった。ハリーは腰をかがめ、岸辺の
露出した地面を調べた。虫や動物が棲む穴がない。ハリーの考えでは、それらが存在しない
のは火山活動によって二酸化炭素が放出している可能性を示す徴候だった。まだ確実なこと
はいえない。そうはいっても……。
 その小さな湖の深い水をのぞきこみながら、ハリーは、それに似た美しくまったく無害そ
うな青い湖から二酸化炭素が一気に噴出した、じつに奇怪なおそろしい瞬間のことを思い出
していた。

2023/05/20(土)20:49:34.93(aF6+V4yPa)


995◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

 それは十年前、アフリカのカメルーンのナイオス湖という、きれいな青い火口湖でのこと
だった。何累代ものあいだ底から動かずにいたガスをふくんだ重い水が、小さな火山性の地
震で揺さぶられた。冷たい水が底からあがってくるとともに、水圧で抑えられていた二酸化
炭素が泡となり、煙突のような形にまとまって、すさまじい勢いで水面めがけて上昇した。
ガスの泡が水面を破り、百五十メートルという信じられないような高さまで水柱が噴きあが
った。死の霧が湖と付近一帯をおおい、千人の人間と牛その他の動物の命を奪った。遠隔地
でもあり、生存者がほとんどいなかったので、知らせが伝わるまで何週間もかかった。
 そういえば去年の冬、ハリーは、故郷の近くで森林警備隊員が山間部のパトロールをおこ
なっている最中に二酸化炭素の仕掛け罠(ブービートラツプ)に出くわしたという奇怪な話を聞いたことがあった。
カリフォルニア中部のロング・バレーのカルデラに大きくひろがっているマンモス山は、四
百万年ずっと活動をつづけていると見なされている火山で、かなり研究も進んでいる。その
眼鏡をかけたずんぐりした森林警備隊員は、激しい吹雪から避難するために、ほとんど雪に
埋もれかけた小屋へ行った。跳ねあげ戸からもぐり込み、小屋のなかにはいった。息ができ
なかった。脈拍が二百まであがった。目の前に星がちらついた。どうにかよじ登り、入口か
ら体を半分出した格好でしばらくのあいだ深く呼吸して、ようやく回復した。
 それが二酸化炭素の狂暴な罠(わな)である。無色、無臭で空気より重い二酸化炭素が、地中に隠
れた火山からにじみ出し、小屋の床のあたりにたまって、雪のために封じ込められた。あと
二回ぐらい呼吸していたら、その森林警備隊員はたちどころに死んでいただろう。
 ハリーが視線を転じると、レイチェルが子供たちと遊んでいた。いま、こうした話を彼女
にする必要はないだろうと思った。彼はランドクルーザーにひきかえした。

2023/05/20(土)20:51:25.05(aF6+V4yPa)


996◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

ダンテズ・ピーク
デューイ・グラム
伏見威蕃[訳]
p194
 大きなオレンジ色の太陽が西の葡萄(ぶどう)色の山々に姿を消すと、いつものように晩がたの寒気
がダンテズ・ピークの町をくるんだ。カスケード山脈の上に出ている雲は、痣(あざ)を思わせる紫
と黄色だった。一年に何回も見られないようなすばらしい夕焼けで、翌日が穏やかな晴れた
一日になることをうかがわせた。
 遅れた数人が、〈坑夫(マイナーズ)のふるさと〉の旗の下の両開きの扉を通り、急いでハイスクールの
体育館にはいっていった。
 マイクを用意した舞台では、レイチェルが事情説明を終えようとしていた。ハリーが、保
安官や水道局長とともに舞台にいて、体育館に詰めかけたひとびとに話をする順番をそれぞ
れが待っているところだった。
「――自分の家を出るというのは、考えるのもつらいことだと思います」レイチェルがつづ
けた。「しかし、いますぐにそうするのが、責任ある行動です。それに、仮になにも起こら
なかったとしても、あとで後悔するより無事なほうがいいでしょう」
 聴衆がまわりの人間のほうを向いて、大声でしゃべったり、意見を交わしたり、たいへん
な騒ぎになった。それだけ聞けばじゅうぶんと考えたものたちが、ドアに向かいかけた。

2023/05/20(土)21:17:18.61(aF6+V4yPa)


997◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

 郡の老人医療施設の看護婦見習いのスーザンが、前のほうで席を立った。「待っていなけ
ればならないの?」騒音よりひときわ高い声で質問した。「つまり、いますぐに避難したい
としたら?」
 聴衆が静かになった。
「もちろん、待っている必要はないわ、スーザン」レイチェルがいった。「いつでも好きな
ときに出ていっていいのよ」
 スーザンが、すこし当惑した様子で笑い、着席した。
 事情をすっかり知るために最前列に近い席にいたエリオット・ブレアは、その言葉の意味
をはっきりと察した。ウォレルに、聞こえよがしにささやいた。「大騒ぎになる前に行くよ」
立ちあがり、通路をすたすたと歩いて、出口に向かった。
 ドクター・フォックスが、口惜(くや)しそうにむっつりした顔でブレアを見送っているレス・ウ
ォレルのほうを向いた。「これで安楽な老後もパーね」
 ウォレルが、毒のある視線を彼女に向けて、立ちあがり、うつむいたままブレアのあとを
追った。これがおれの人生だ、と考えていた。あしたブローカーに電話して、コンピュータ
で計算させよう。ドカーン! みんな破産だ。
「われわれが出ていったあと、家や店は守られるの?」カレン・ポープが叫んだ。「盗難を
ふせぐ手だては?」
「州兵軍に召集がかけられています」レイチェルがいった。「午前零時に到着の予定です」
 質問がとぎれたとみて、レイチェルは向きを変えた。「では、ハリー・ドールトン博士に
説明を引き継いでもらいます」

2023/05/20(土)21:18:58.01(aF6+V4yPa)


998◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

 ハリーが、演壇に歩み寄り、マイクを持った。上を向いている顔を見まわした。もう名前
も知らない群集ではない――名前を知っているもの、顔見知りがおおぜいいる。
「はっきり申しあげます」ハリーは、力強い声でいった。「これは単なる予防措置です。け
っしてパニックを起こしては――」
 ハリーの目の前の水差しの氷がカタカタ鳴った。ハリーは、そこから目が離せなくなった。
まるでひとりごとのように、小声でつづけた。「――なりません」
 体育館が揺れた。たいした揺れではなかったが、緊張している聴衆の注意を喚起(かんき)するには
じゅうぶんだった。

 臨時観測所では、書類を見ていたテリーが、怪訝そうに顔をあげた。「みんな感じたか?」
 ドレイファスが、不安のにじむ顔で見まわした。
 彼らは一日ずっと微弱な群発地震を記録していたが、それは非常に敏感な地震計と犬にし
かわからない程度のものだった。

 ダンテズ・ピーク・ハイスクールの体育館では、聴衆がそわそわとささやきはじめた。そ
のとき、もう一度、小さな揺れがあった。
「みんな、どうか落ち着いてください」ハリーがいった。「冷静でいればだいじょうぶです。
では、出口に近いかたから……ゆっくり出ていってください」

2023/05/20(土)21:20:42.63(aF6+V4yPa)


999◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

 また揺れた。こんどは大きかった。
 だれかが悲鳴をあげた。不意に、山火事のようにパニックがひろがった。集まったひとび
とが、出口へ殺到した。
 バスケットボールのゴールが、激しく揺れた。旗がたるきから落ちた。

2023/05/20(土)21:22:14.26(aF6+V4yPa)


1000◆p132.rs1IQ [sage]

AAS

NG

華氏451度
レイ・ブラッドベリ
宇野利泰[訳]
p183
 モンターグの耳のなかで、蛾が羽音を立てた。
 ――モンターグ、聞くんじゃない! こいつは、水をかきまわして、泥だらけにする!
「ほう、ばかにおびえているじゃないか」と、ビーティはつづけた。「むりもない。きみが頼り
にしている書物の知識を逆用して、きみをやりこめようというんだからな。どこから攻めてこよ
うとも、おれはおそれるものじゃない。きっさきはみんな、受けとめるぞ! およそ本ぐらい、
裏切り者はないんだ。援助してもらおうと思っていると、どっこい、あべこべに、敵方になる。
だれだって、利用することはできるぞ。ところが、つかえばつかうだけ、泥沼のまん中で、うご
きがとれなくなるのが落ちさ。名詞、動詞、形容詞の大波におしながされてしまうだけよ。
 まあ、そういったわけで、おれの夢は、おれが《火トカゲ》に乗りこんで、きみにこう話しか
けるところでおわった。おい、モンターグ、おれといっしょにくるか? とね。するときみは、
すなおに乗りこんできた。そこで、おれたちふたりは、しずかな祝福にみちたこの役所へもどっ
たので、万事、平和におさまったというわけさ」
 そしてビーティが、にぎっていたモンターグの手首をはなすと、その手はどすんと、テーブル
の上に落ちた。
「おわりよければ、すべてよしだ」

2023/05/20(土)21:24:54.33(aF6+V4yPa)


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