「ガッキィファイター」2017年7月28日号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　通巻　第575-1号

■目次■

□今夜は寝かせないーー傑作ドラマ完全紹介ガイド （第29弾）
　◆コメディと殺人と恋の合体「キャッスルーーミステリー作家は事件がお好き」



■■今夜は寝かせないーー傑作ドラマ完全紹介ガイド （第29弾）■■


★コメディと殺人と恋の合体「キャッスルーーミステリー作家は事件がお好き」★━━━━
━━━━━━━━━━━━━━★


　今夏の日本各局の連ドラは、捜査ものと医療ものと恋愛もので9割を占め、グローンナ
ップやホラーや時代ものやスポーツその他は激減している。
　小説もドキュメントも映画もドラマも確実に（ストーリーや映像などが）進歩しているゆ
え、たとえばかつての「刑事コロンボ」や「スパイ大作戦」は衝撃だったけれども、いまは
語学の熟練にはなっても、ドラマとしては脚本も構成も技術もスキだらけで、時代の役割を
終えたことは否定できない。もちろん、その時代にふさわしい傑作だった。
　映画「ローマの休日」や「カサブランカ」、ドラマ「フレンズ」などはいまに至るも完成
形を維持する稀有な例だと思う。最近引退したアラン・ドロンでいえば「太陽がいっぱい」
はやはり名作、「ゾロ」は当時ロードショーで観た人も記憶にあるかどうか。もちろん、主
観は排除できないから、好みはそれぞれなのかもしれない。「スター・ウォーズ」は多くの
ヲタクを出したパワフルな映画だった。

　オンデマンド時代への流れが強まり、この分野でも初期には私はエバンジェリストでい
たく願うものだが、本（読書）が激唱されるわりには映画やドラマはそうでもない。私には
不思議に思える。「ありえたかもしれない」人生や時代を、実に多彩に身体や脳に蓄積され
るーーロードショー絶対派やドラマの定刻派もいるけれど、中途半端に知識のみが優先さ
れ教養が感じられぬ、たいていつまらない人たちだ。偏見が少しあるなら許してね。

　インターネットの超初期に最先端でエバンジェリストも務め、またたとえばiPhone 初
号機が出てすぐスマホの新時代の画期性を連載した。前者は5年もかかったが、後者は1年
も起たずに、当初の役割は終えたとか思う。連載の良い点でもあり、電子版はあとからも簡
単に読み返せるので2度も感動してもらえる（可能性が充分ある）。
　一般に息の長い職業作家というものは、「普通の世界ではへんな人」でも全く構わないわ
けだが、配信や刊行するものは、タイムリーかつ面白く有意義なことと、50年後に改めて
評価されるものを当然に心がける。「普通の発想に絶対満足しない人」にしか面白いものは
書けない。たぶんね。
　日本のドラマで気になるのは、雑誌連載や単行本のようにひとりで書き、アメリカなどと
んでもない市場を形成している国では、ドラマや映画をとんでもなく大きなチームで創る。
当然のように脚本は数人から十数人で練り上げる。E・H・ケリーのようなたぐい稀なる天
才脚本家もむろんいる。

　本日、絶賛お薦めするのは「キャッスルーーミステリー 作家は事件がお好き」。2009年
に始まり、今年完結した。米国ABCでも最高の視聴率と人気を誇っただけあって、小難し
いところはない。例外ももちろんあろうが、ミステリーが嫌いな人は、謎が嫌いなのか、何
かがストンと欠落しているのだろう（か）ーー保留しておきます。
　むろん世代にもよる。小学生でアニメ「名探偵コナン」が好きな子は理知的な感じがする
としても、高2以上で「コナン」ファンは知性が危ない。
　世の中は謎に満ちている。どこかで己が判断せねばならぬことも多い。これらの人生の幾
多の局面で「問題設定」力と「謎の解決」力は極めて重要だ。仕事の出来不出来にも大いに
関わる。

　いまは成田空港からサンフランシスコ空港に向かう機内で書いている。そのファースト
クラス航空券と、ラスベガス（のあるホテル）やスタンフォード大までのプライベートジェ
ットまで手配してくれたこともあり、かなり体調は優れないものの「コンプ」（詳しくは近
日中に「サービス革命」として書きますね）のありがたさを感じる。
　先週は4日間の（毎月恒例となった）ソウルの五つ星ホテルでの「コンプ」は、何から何
まで（ビジネスクラス、リムジン送迎、内外の一食数万円から何食でも、スィートも無料そ
の他）提供してくれる。「ついで」を承知で、その韓国でのドラマについて書いておこう。

　今年だったか、期待の大きかった「ラブレイン」がドラマとして破綻した。「冬のソナタ」
の脚本家によるものだ。評価は人による面があるとは思うものの（ミシュラン的な料理も多
段階に評価できたりできなかったりするでしょ）、この脚本家からセブ島での仕事場を譲り
受けた事実もあり、とても無念に思う。
　簡単にいってしまえば、イケメン男性が女性を好きになり、その美女も彼を好きなのにお
互い表現できず、そのイケメン男は親友に自分の気持ちを隠したまま（隠すのが親友なの
か？）譲り（はぁ？）、それ以外の何の伏線も新鮮さも工夫もなく、予想通りの終わり方に
なった。
　15年ほど前に韓流ブームが起き（植民地時代を終えて長く韓国では日本の歌すら禁止さ
れていた）、「ヨン様」の「冬のソナタ」を契機として大ブームが起きた。いまはパチンコの
1機種でしかない。
　12年ほど前、睡眠時間を削って「ヨン様」の「初恋」を見た。まだオンデマンドではな
かったので、毎朝5時からの集中放送だった。 キツい日々（笑）。毎日2話分を見続けた。
確か96話だったか、とにかくとんでもない努力を要した。もちろん舞台（背景）の映像は
韓国の田舎をより深く知るために有意義だったけれども、とにかくストーリーがものすご
く単純。
　初恋の男女が、その気持ちをお互いに表明することなく、ヨン様は恋人を兄に譲るーーそ
れだけなのだ。殺すぞてめえ。ツルゲーネフの「はつ恋」の「びっくり」をまったく目指そ
うとする心意気すらない。
　ちなみに「ラブレイン」は、ハリウッド映画「ある愛の詩」と重ねようとしている努力は
感じ、実際ドラマのなかに「 愛することは謝らないこと」とのフレーズが何度も出てくる。
　しかし、「ある愛の詩」では「愛とは決して後悔しないこと」が名訳として定着している。”
Love means never having to say you're sorry.” の訳としてもベストであろう。
「ラブレイン」では邦訳が「愛することは謝らないこと」と何度も登場し、訳者のレベルの
低さにもあんぐりとさせられる。

　さて、日本の連ドラで刑事ものと医師ものが共通するのは、第1に場所をとらず倹約で
き、第2にしばしば脚本家（50歳が限界、しかもベテランでも米国より2桁もギャラが安
い）が頻繁に逃げてしまうほどの断崖絶壁に立たされており、第3に未だジャニーズの呪
縛とともに沈没しつつあり、学校や会社で「ドラマ」放映翌日に話題となることが失われて
いる事実に、そろそろ多くの視聴者が気づいている。
　日韓のテレビ脚本家がなかなか育ちようがなく、テレビに予算がつかないうえ、オンデマ
ンドの時代に「定刻」や「確実録画」する御仁は絶滅危惧種となった。

「キャッスルーーミステリー作家は事件がお好き」は、先述したとおり、全米さらには全世
界で大人気を誇る。2009年に第1シーズンが始まった途端、ABC局でダントツ1位をキ
ープし続け、第8シーズンがフィナーレを飾った。終了した段階でオンデマンドの価値は
さらに高まるが、計算すると42分×172回かな、こうして私の睡眠不足は常態となった。
自縄自縛。“取材”は大変なのだ。

「キャッスルーーミステリー作家は事件がお好き」のタイトルは、Hulu や一部Dlife など
オンデマンドのタイトル、それより前にもNHK BS プレミアムやテレビ東京でも中途半端
に流した（全話ではなかった）ときは、「キャッスルーーミステリーのNY事件簿」という
タイトルだった。
「刑事コロンボ」のようなビシッと決められておらず、なんだか家族ぐるみで、とか、アホ
でも楽しめるというようにとの“工夫”はあったのかもしれないが、私にはこのタイトルが
ダサすぎて、見始めてビックリすげえじゃんかの派だ。
　原題は“Castle”なので、許してやってほしい。

　ニュヨーク市警の殺人課がメインとなっている。チームリーダーは美人でいちばん（チー
ムのなかでいちばん）若いケイト（キャッスル）・ベケット。このケイト（愛称ね）の魅力
を主人公キャッスルが一言で「背が高いこと」と語る場面があるが、しばしば視線はヒップ
やバストに行っている。彼女は、この連ドラが事実上のデビュー作かと思われ、人生を一変
させたシンデレラの一人である。キャッスル役のネイサン・フィリオリも、映画「エアポー
ト1994」がデビュー作であったし、その後もチョイ役ばかりでドラマ「デスパレードな妻
たち」でも目立つ役ではなかった。1話あたり1億円。まさにアメリカドリームだよね。

　殺人課のメンツは3人。美人で真面目な風貌ながら、下ネタ、皮肉、ルールは自ら破る
は、エッチ好き。頭はかなり切れるのだが、人気作家に助けられつつ、この穏やかな、とい
うか少年のまま売れっ子になってしまったキャッスルとのコンビはかなり新鮮だ。
　特殊技能があるわけでもなく、理詰めでもなく、日本を代表するデカもの「踊る大捜査線」
と「相棒」を楽しめた方なら絶対に楽しめること保証つき。とにかくアメリカという国は、
犯罪の規模と異常さで、日本など及びもつかない。だから米国の犯罪ものとテロものは、世
界最高級になる素地に満ち満ちている。

　笑いと、傑作な謎解きがメインかといえば断じてそうではなく、迂闊（うかつ）に涙々と
なる回も多い。恋話へのエールが、もう一つの伏線にあるーー第6話のキャッスルとベケ
ットのーーが、結婚間際に幾重もの「壁」が次々とたちあらわれる場面さえ、毎回見事な「新
しい事件」が重ねられてくる。
　第3シーズン8話の「電球交換のヒーロー」、第6シーズン11話「放火魔の罠」などか
ら“試し”にまずはご覧あれ。泣くよ。

　もうひとつ例を挙げれば、NY市警はアトランティックシティ（全米第2のカジノ街）の
管轄ではないと捜査を排除されるが、その夜に「エルビス・プレスリー」ショーがあるため
（私も見たことがある）、デカ2人とキャッスルはエルビスに変身して再入場に成功。この
堂々たるコスプレと化粧により、総管理室の顔認識ソフトに引っかからないわけだ。このあ
たりは、コナン的な現実離れとは次元が異なり、リアルとまではいわないまでも、充分にあ
りうることであり、何よりユーモラスな演出は常に愉快だ。

　ついでながら、解説書では西のラスベガス、東のアトランティックシティと呼ばれてきた
が、トランプ（現大統領の）成金キンピカホテル&カジノを含め、1990年までに名をなし
たアトランティックシティのホテルは続々倒産し、私を人事権と予算執行権のあるコンサ
ルに指名しなかったためか（笑）、ゴーストタウンになるのは必至ーー全盛期の10分の1
くらいになってしまった。

　FBIや州警察や市警などで、退職者や、特別な能力のあるものが積極的にコンサルタント
として雇用されるのは事実である。文化の違いともいえようが、日本の警察はあまりにも閉
鎖的なため、世間の感覚が消え、親戚や同級生すら友達がほとんどいない警察官や捜査官が
多い。改めてほしい。

　ドラマ「キャッスル」では、よくある“Police”マークの代わりに、作家であるキャッス
ルは“ Writer”とつけているが、もちろんジョークである。
　このキャッスルは、第1シーズンでは確か22冊の本（ベストセラー）を出して、なんと
なく壁にぶつかり作家生活に飽き飽きしていたところ、このニュヨーク在住の大ベストセ
ラー作家（第1作はいきなり300万部超え）には市長はじめファンも多く、コンサルタン
トではなく、取材の名目で美人刑事ケイトに貼りつくことが許される、との設定。第8(最
終）シーズンでは26冊となっており、ケイトをモデルとした『ニッキー・ヒート』シリー
ズも大好評だったと見え、女好きの作家と、セックス好きの敏腕美女刑事とが、次第にステ
ディな関係になっていくのも、ストーリーにムラがなく秀逸である。よくできている。
　実際、『ニッキー・ヒート』はリアルにキャッスル作として、本当に大ヒットする、との
オマケもついた。

　政界の大物（大統領候補）にも物怖じせず、権力やメディアコントロールなどを誇示され
ても、人気作家は「僕のツイッターで流そっ。50万人のフォロワーがいるんだ」と、本物
のトランプならめちゃくちゃ感動（笑）するところ、「ツイッターて何？」の大統領候補は
幾多の証拠をチームにつかまれ、ついに逮捕される場面も楽しい。
　キャッスルの母（彼女がこのドラマのなかで最も有名だと思う）と愛娘も、このドラマの
「アメリカ的！」な厚みに大いに華を添えている。

　リチャード・エドガー・キャッスルがドラマ上のペンネームなのだが、もちろんエドガー
はエドガー・アラン・ポーからもらっている。知らない？
　江戸川乱歩も、エドガー・アラン・ポーを日本読みにしたペンネームであることはご存じ
かと。それくらいエドガー・アラン・ポーはミステリー界に大いなる足跡を残したのだなあ、
と静かに偲ばれる。
　キャッスルが作家を目指したきっかけは、父親と観に行った映画「007 カジノ・ロワイア
ル」だと回送されるシーンがある。父は、CIAのエージェントだった。母と父との一夜の愛
の結晶だっただけでなく、父がシーズンの各所で味のある役を演じているのもステキだ。
　キャッスル自身もベストセラー作家になったのは、小学校のとき作文だけは褒められ、そ
れから「ものすごい努力」をして先生やクラスメイトに「恩返し」した、との述懐もいいよね。

　Huluなら第1〜第6シーズン、Dlifeは1話ずつ配信ーーオンデマンドの長所なしーー、
Unextは第6〜8シーズンのみ、消え方が早すぎ、Amazon Video 1話だけ見たい場合はラ
インナップ有意義かも。たいていはプライム会員向けに作られたサービスであるにもかか
わらず、多数がオンデマンドで視聴できない。
　確かに過渡期ではあるものの、ほぼ完成したオンデマンド！
　見ないで死ねるかーーの時代。15年くらい前から国際線のモニターでも、オンデマンド
は圧勝。全機一斉に始まり一斉に終わった時代に、もう戻れないと思いますよね！


　では、また！

「ガッキィファイター」2017年7月30日号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　通巻　第575-2号

■目次■

□社説
　◆ヘーワな国の自爆テローーネット拡散時代の密室とプライバシー異変ーー現代不倫考



■■社説■■


★ヘーワな国の自爆テローーネット拡散時代の密室とプライバシー異変ーー現代不倫考★
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　読者のなかにも不倫や浮気をなさっている方、または過去そのような体験のある方、将来
ありうる方を含めると、莫大な割合や数になることだろう。とくに「ありうる」は数値化で
きないので、「絶対にない」と断じてもそうは問屋がおろさないーーこともあるのが人生と
いうものだ。
　離婚（奥方からの三下り半）を突然（あくまで彼にとって突然なだけ）申し渡されバツイ
チとなった友人が、3年前から恋人ができ幸せそうであった。いまから3カ月ほど前、その
恋人との逢瀬があまりに少ないので気になり、「うまくいっているの？」と訊いたところ、
いい感じだそうだ。が、なんだか、しっくりこない。彼女もバツイチかとか同棲はしないと
かと続けざまに問うたところ、「あ、彼女は結婚していて子どもも2人いるんで、普通の恋
人です」と答えた。
　なぬっ。

　恋人であるとの認識はここで措くとしても、「普通の恋人」ではあるまい。「不倫だった
の？」と重ねて問えば、「いえ、普通のーー」と。
　私は責めているのではない。ある意味、どうでもよろしい。が、「民事法的には損害賠償
請求権は相手の夫にあり、その場合の被告はキミであることは分かっているわけだよねえ」
と大新聞の記者には釈迦に説法とは存じながら、つい確かめてしまった。友人だからね。「え、
そうなんですかぁ」との返事に私は話題を変えた。

　さて、一昨日あたりから東海岸までは伝わってこなくとも、ドメスティックには1,000万
人の読者を超えたのではないか、との推測がなされる例の「自爆テロ」不倫の経過に注目が
集まっている。
　1,000万人はPV（ページ・ビュー）からの本日14時（日本時間）現在の推測であるが、
世界一の発行部数（9,690,000部）を誇る読売新聞より多いのみならず、いまどき新聞はま
ず口コミにもならず、拡散もされないわけだが、ネット不倫炎上系は口コミと拡散の嵐に見
舞われる。「知らないと恥をかく」系とは、たとえば「いまの首相は誰だっけ？」とか、「北
がミサイルとかなんとかって聞いたけど、北ってどこ？」みたいなやつね。
有名でなくとも、「話題性にとびきり優れている」系は、かなりの伝播力をもつ時代となった。

　このたびの「大不倫」は、結論からいえば「この夏、最高のエンタテインメントをありが
とう」系の話題である。結論ではないか。
　一般に度すぎたプライバシー問題というテーマはあるにせよ、本人たちが告白または暴
露してしまえば、プライバシーもなにもあったものではない。こんな言葉を使うことになろ
うとは自分でも不思議なことだが、いわゆる「ハメ撮り」が本人たちによってネット(ブロ
グ）に動画つきで流れたものだから、さあ大変。

　もし男の側が「2人の性向の自撮り動画」をネットに流したら、知った人はほぼ全員が非
難し、バカヤロウと思い、逮捕だ、となるだろう。猥褻（わいせつ）物の陳列罪、頒布罪（刑
法）により懲役2年以下などが科される。さらに、この「別れ話」に伴って、ストーカー防
止法やら恐喝罪やらが噴出すると、もうわくわくするしかないではないか。

　お互いーー主として男側ーーが自撮りした性行為は、2人でやっている場合はバカヤロウ
とは思うものの言論の自由ならぬ性行為の自由というものであろうが、そういうものはや
めておいたほうがいい。
　実際にネットで公開された一群の映像を見ても、グロすぎ、芸術性のカケラもない。こん
なものを自分たちで、終わったあとや日常時に見て楽しいのか。
　と、ここまでは、あくまで「2人の秘密」である限り「問題」にはなるまい。しかしネッ
トの時代を甘く見てはいけない。

　おかしいのは、40男（ネット旅行代理店大手の一休 CTO ＝ 最高技術責任者）は、まさ
にネットのプロ中のプロとして、しかも本を4冊ほど出しており、そのなかで「仕事は秒速
で！」「アウトプットが大事！」とエラそうにアチコチで書いていたものだから、22歳プラ
スα のNTT東日本関東病院看護婦の元カノに「秒速アウトプット野郎！」（爆笑）と公然
と罵（ののし）られた瞬間、また添付されていた一群の（いまは消された）交尾映像を見れ
ば、まさしく「秒速的に早漏」であるのは明らかなのだ。これが瞬く間にネット上で拡散し
た瞬間、デジタル空間はシーンとなってしまったのか、爆笑の渦になったのかは判然とはし
ない。本当は判然としてるけど。
　私としては「今年の流行語大賞」は決まりだな、とは思った。自由国民社にそのような遊
びもゆとりもなさそうな気配が経営的にも無理筋となるかもしれないーーかな。

　2人とも有名人ではないところも注目に値する。が、肩書きはたいていの日本人は知って
いるのだ。伊藤直也さんは知らなくても、「一休のCTO」はなんとなく分かる。IT業界で
は著名人だ。「かほ里さん」は世間に知られていないが、いまは瞬間有名人となった。それ
ぞれ会社と病院に、どんな顔をして出勤したのだろう。土日を挟んで、いよいよ明日は月曜日！
　一休の伊藤直也さんも自分のブログで、「彼女の書いているとおりです」と認めたゆえ、
この2人のプライバシーはカケラもなくなった。
　とにもかくにも、妻子もちのIT業界のトップクラスが、若いナースの恋人に、性体験で
は男の勝ち（笑）と推測するのは推測でしかなく、浮気していた若い相手から「瞬間アウト
プット野郎！」と言われるのはスゴすぎだよね。私の記憶から離れそうもない、しばらくはーー。

　LINE での、ある日のやりとりも公開されている。
　かほ里「写真！」
　なおや「おまんこー」
　かほ里「これ見てなおやさんはオナニーするの？」
　なおや「入れたい。なんだかむらむらしてきたから、もっとエッチなやつ送って」
　かほ里「むらむらしてきたんかい」
　なおや「エッチしたい」
　かほ里「風邪なおるまでだめ」
　なおや「がーん」

　引用する俺が下品になってきた感すらあるかもしれぬけれども、これが「現代日本のリア
ル」ではある。かなり恥ずかしい、読んでるだけで。が、ご本人たちがオープンにしてしま
った経緯を改めて明記しておく。どちらがよりバカヤロウかは、さらに検討するとして、「ハ
メ撮り」動画集公開に際して、かほ里さんがブログで書いた内容は、以下のようであった。

「詳細をブログに書き、動画にもまとめてみました。ブログの内容、動画とともにさまざま
な権利について、私は放棄しますので、ご自由に再利用、保存、複製などしてください」
（2017.7.18、かほ里さんによる）

　権利て（笑）。先ほども書いたとおり、ハメ撮り公開は犯罪なんだよ。
　とにかく、このような行為自体は彼女の利益にはならない。相手（一休役員）への報復と
してのみなされたのであってみれば、ネット上の自爆テロというほかあるまい。

　2人の出会いは2014年、五反田で知り合い、既婚者の伊藤直也さんから「もちかけられ
て」おつきあいを始めたそうだ。避妊もせず中出しの瞬間アウトプットを繰り返していたこ
とが両者によって公にされ、一休（仮名）さんは「子どもができたら責任をとる」といって
いたーーが、どう責任をとるつもりで、また実際とったのか？
　NTT東日本関東病院（仮名）のかほ里さんと一休さんが2016年8月12日に交尾した際
に妊娠したとブログに明記されており、9月27日に彼女は一休に相談なく堕胎した。ここ
の「相談なしに」が、過激フェミニストがいう「産む産まないは女が決める」の歪みをさら
に深めていしまった。

　この一連の経過後、かほ里さんの執拗な態度に彼はビビりまくり、今年2月13日に別れ
話が持ち出され、一休さんは警察に「ストーカー容疑」やら「脅迫容疑」で彼女を告発する
にいたる。実際、警察は接近禁止を彼女に伝え、違反したらストーカー防止法違反で逮捕す
ると明言している。一休さんはこれでカタがついたと思いきや、NTT（仮名）の怒りはさら
に募った。ついでながら、警察沙汰を起こしておきながら、一休さんは3度もかほ里さんと
セクスをしている。驚愕だ。
　妊娠させておいて、しかも責任をとるといいながら、「堕胎費用もケチるとは、おのれ人
間か！」との怒りも当然ながらーーこのような怒りは警察やマスコミには相手にしてもら
えない時代が長く続いていた。だが、ネット時代は違う。
　たとえば八十二銀行が私の口座から計1,340万円を、いろいろ屁理屈をつけている（ネッ
トバンクの暗唱番号を20年間の合計（笑）で3回ミスがあれば、平気で返却しないと言い
張るなど）も、その卑劣さをネットで公然化できる。いずれ顧問弁護団も入る予定だが、私
としてはこんな額で銀行の日常的犯罪や「お客様の安全のため」との偽善による窃盗を露呈
させられるほうが楽しみな感じがすることに、時代考現学として、「不倫」事件ともかなり
似ている。勉強になるよね。

　例の不倫事件に関する私の見解を一言でのべれは、一休さんが若い恋人を「物扱い」し続
けたことに、この薄汚い結末となったコアな原因がある。そして、女性は捨て身の抗議をした。
　マスコミは取り扱いえないーーこんなに身近かで、何とか学園問題と首相の疑惑より哲
学的にも深いはずだが、なぜ扱えないのだろう。明治大正時代の新聞を読むと、校長と（生
徒の）美人母との密会などなど数回にわたって連載されたりしている。
　地方紙も負けてはいない。そんな事実や歴史を知って、この問題を取りあげようとする声
もマスメディアでは上がらないゆえ、ここが独擅場になる。なにせこの欄は社説だからね。

　以上を大きく分けて、問題点は10ほどに整理できるだろう。

1.マスコミの疲弊と本人発のネットメディア
2.不倫は刑法犯ではなく民事
3.不倫をするなら墓場まで
4.22歳と40歳ーー遊びと真剣の交差
5.明治大正時代には新聞の領域だった
6.どんな顔をして出社すればいいのか
7.平和な国の自爆テロ
8.セクスを自撮りするな
9.この夏ベストなエンタテインメント
10.相手選びーー良きギャンブラーに

　まあ、適当なまとめであったかもしれぬ。ちょうど10個ではないし（笑）。
　ともかく1〜9は、了解されよう。10について、補足したい。

　人間とは、単純な生き物ではない。ステディな恋人を選ぶにせよ、50年間も同衾（どう
きん）なり同居する相手にせよ、カオス現象にならざるをえない。『カオス』（新潮文庫）を
強くお勧めするが、カオスの代表として雪の結晶やらコーヒーにクリームを流し込む場合
も、結晶やクリームという「まとまり」はあると同時に、1つとして同じ形は存在せず、量
や質までかなり異なればまったく「性質」が異なってくる。「バタフライ効果」も比較的よ
く知られるようになった。そのような変化は、人間関係でも見すごせない。
　つまり、超短期、短期、中期、長期、超長期に「仲良く」暮らせるか破綻するかどうかは、
まさしくギャンブルだといえる。年末ジャンボなどの丁半博打（ちょうはんばくち）ではない。
　競馬やカジノでひと財産を成した人は意外に多い。（8割型の）必勝法はある。交際相手
を取っ替え引っ替えする人や、同時に数人以上とつきあえてしまえる人もいる。そういう人
種（人の種類）から見れば、たった1人のステディやお見合いやら婚活やらで生涯の伴侶を
「運命のひと」と思い込める人種は奇異に写っているに違いない。
　相手選びは、過去の体験知や（ドラマや映画や小説やら周囲の人々を通しての）観察力や、
その結果でもある直感力などに依拠しており、現代日本では3組に1組が離婚するまでに
至っており、この率は高まり続けるだろう。